2023年6月19日月曜日

その痒み、肝臓が原因かも?

一般的に『痒み』とは皮膚にある肥満細胞から分泌される痒み物質のヒスタミンによって引き起こされると考えられているため、抗ヒスタミン薬で治療することがほとんどです。

でも、抗ヒスタミン薬で効果のない痒みや、痒み以外にも足のつり、だるさといった症状が見られるなら、そのかゆみの原因はもしかしたら肝臓にあるのかも。

肝臓の病気から生じる痒みは中枢性の痒み、つまり脳が感じていてオピオイドによる痒み誘発系、抑制系のバランスの乱れ(オピオイドの中でもμとκオピオイドのバランス)といわれています。



そのような肝疾患の痒みに適する薬としてはレミッチやナルフラフィン(メーカーにより適応ないのもある)があり、これらの薬剤は皮膚や脳の中で活性化した2種のオピオイド物質のバランスをもとに戻して痒みを抑えるとされています。

ちなみにレミッチでは5%以上に見られる副作用として不眠や、便秘、頻尿があり、特に慢性肝疾患では投与開始後4週以内に現れることが多いのに注意。

抗ヒスタミン薬でもかゆみが治らない!という訴えがあったら、とりあえず肝機能数値をチェックしてみるのがいいですね。

2023年6月17日土曜日

レボドパ製剤と酸化マグネシウムの併用について

パーキンソン病の初回に使われることの多いレボトパ製剤。

主なところではレボドパ・カルビドパ合剤のメネシットやネオドパストン、レボドパ・ベンゼラシド合剤のマドパーなどがあります。


高齢の患者さんにも使用されることが多いので、便秘薬との併用も多いのですが、注意すべきは酸化マグネシウム。

レボドパはアルカリ性下で酸化分解が促進されるため、レボドパ製剤と酸化マグネシウム製剤を一緒に懸濁すると配合変化が起こり、レボドパ製剤の効果が低下する(見た目も黒色になる)ことがあります。
これは水に溶かさなくても粉砕後の粉を混合して一包化しても起こることがあるので注意。

そのため、レボドパ製剤と酸化マグネシウム製剤を同時に服用する場合は、酸化マグネシウム製剤のみ、他の薬とは別に懸濁しなくてはなりません。

胃酸中では酸化マグネシウム存在下でもアルカリ性になることは考えにくいので、併用する場合は少し服用のタイミングをずらせばよいものと考えられますが、可能ならアミティーザなどに変更できればよいですね。

レボドパ製剤はそのほかにも閉塞隅角緑内障の患者への禁忌にも要注意です⚠️

2023年6月12日月曜日

カリウム製剤の変更時の注意

カリウム製剤は薬剤ごとの生体内利用率や組織移行性等の違いにより、常用量(添付文書で規定している用法・用量/1日量;K+のmEq数)が異なります。そのため欠品などで薬剤変更する際にはメックの換算に注意が必要。


切り替える際の確定された正式な換算式はないのですが、常用量対比から計算する方法によれば、

例えばグルコンサンK 30mEqからアスパラカリウム錠300mgへ変更する場合

  グルコンサンK 30mEq ― アスパラカリウム錠300mg1錠=カリウムとして1.8mEq
                  ↓
  アスパラカリウム錠300mgを用いて、12mEq(30mEqの4割)になる量を求めると
                  ↓
         12mEq/1.8mEq=約7錠 となります。


主なカリウム製剤(経口剤)の常用量 

有効成分    :アスパラギン酸カリウム
製品名     :アスパラカリウム
/ニプロES=ニプロ(製造販売会社=販売会社)
剤形(K量)   :錠 (1.8mEq/錠)/散(2.9mEq/g)
用法・用量   :通常成人1日0.9~2.7g(錠:3~9錠、散:1.8~5.4g)を分割経口投与する。
         なお、症状により1回3g(錠:10錠、散:6g)まで増量できる。
常用量の1日K量:錠 5.4~16.2mEq/日/散 5.2~15.7mEq/日

有効成分   :グルコン酸カリウム
製品名    :グルコンサンK
/サンファーマ(製造販売会社)
剤形(K量) :錠(5mEq/錠)(2.5mEq/錠)/細粒(4mEq/g)
用法・用量  :1回カリウム10mEq相当量を1日3~4回経口投与。症状により適宜増減する。
常用量の1日K量:30~40mEq/日
  アスパラカリウムとのK量の常用量上限比    1:0.4
  アスパラカリウムへの換算式(目安の初回)   グルコン酸KのmEq量×0.4=アスパラカリウムのmEq量

有効成分   :(徐放性)塩化カリウム
製品名    :スローケー錠600mg
/ノバルティス(製造販売)[2021年3月末経過措置満了予定]
       ケーサプライ錠600mg/佐藤薬品=アルフレッサファーマ(製造販売会社=販売会社)
剤形(K量) :錠(8mEq/錠)
用法・用量  :通常成人は1回2錠を1日2回、食後経口投与する。年齢、症状により適宜増減する。
常用量の1日K量32mEq/日
  アスパラカリウムとのK量の常用量上限比    1:0.5
  アスパラカリウムへの換算式(目安の初回)   スローケーのmEq量×0.5=アスパラカリウムのmEq量
                         ケーサプライのmEq量×0.5=アスパラカリウムのmEq量


もちろんカリウム値についてはその後も測定しながら薬剤量を調整しなければなりませんが、初回変更時のメック換算で焦らないよう、まとめてみました。

*常用量対比=それぞれの製剤の1日用量の上限同士を治療学的に等量と考え、以下を比例計算するという考え方